頚部の打撲を起因とした肩甲上神経麻痔を疑う一症例

摘要

肩甲上神経は、第一胸神経付近より分枝し、肩部外側の棘上筋、棘下筋を支配する末梢神経である。 同神経は経路の一部で比較的先鋭な肩甲骨前縁を越えることから、前肢が後方へ滑った際に肩甲骨が急激に前方へ移動すると圧迫、挫滅を受けると考えられており（捕捉性末梢神経傷害entrapment neuropathy）、多くの肩甲上神経麻痺はこのような機序で発症すると推察されている。 しかし今回我々は、前記の機序とは異なり頚部近位の打撲を起因とし、深部筋間を走行する肩甲上神経が直接的もしくは間接的（打撲により生じた血腫による圧迫）に重篤な傷害を負ったと思われる症例（1例）に遭遇したので、その概要ならびに病理学的所見を報告する。