胃潰瘍の仔馬血清中に検出されたα1－アンチトリプシンの意義

摘要

仔馬の胃潰瘍は臨床的症状を現さず、重篤の場合には胃穿孔により死に至ることも有る。よって、早期の血清診断が強く望まれている。 本研究目的は、仔馬血清中に胃潰瘍の病態シグナルを探すことである。 内視鏡検査で胃潰瘍と診断された仔馬の血清蛋白質を二次元電気泳動で分離したところ、3つの蛋白質スポットが特異的に発現することを見いだした。 質量分析計（NanoESⅠ－MS／MS）を用いてこの蛋白質を解析したところ、そのうちの一つはα1－アンチトリプシンであることがわかった。 ヒトα1－アンチトリプシンの抗体を用いてウェスタンプロツティングを行ったところ、58kDaと55kDaにバンドが検出された。そのうち55kDaのバンドは、胃潰瘍仔馬血清47サンプルのうち44サンプルに検出された。一方、健康馬血清22サンプル中には3サンプルのみに検出された。 ∩嫌洡谓Y果は、仔馬胃潰瘍の血清診断にα1－アンチトリプシンが応用できる可能性を示している。