クオラムセンシングとマクロライド4

摘要

これまでクオラムセンシング機構について詳述してき た。前号の最後に，マクロライドの病原体増殖抑制効果が優れているとは言い難いが，マクロライドカ？N-ァシル-L-ホモセリンラクトン（AHL)などのォートインデューサー の合成を阻害することでクオラムセンシングを制御し，そ の結果としてバイオフィルム形成に必要な細胞外多糖 (EPS ： Extracellular Polysaccharide)の産生を抑制するこ とで抗菌効果を発揮することについて触れた（図一1)。こ のようにマクロライドは静菌剤としての抗菌活性以外に， ①消化管運動機能亢進作用および②免疫や炎症細胞を介し た慢性呼吸器疾患の改善作用が新しい薬理活性として認知 されている。では，生産動物医療においてどのようにマク 口ライドを扱えばよいのだろうか？確かに生産動物医療 では治療経費，薬物の残留，耐性菌など様々な制約がある が，まずは慢性呼吸器疾患に対するマクロライドの理想的 な治療方針を示すことが大事であろう。本連載では，マク 口ライド系抗生物質のタンパク合成阻害剤以外の薬理作用 について，2回にわたり紹介する。特に後半では慢性呼吸 器疾患に対するマクロライド療法について言及する。臨床 獣医師がフィールドに合ったアプリケーションをしてくれ ると信じて話を進めていきたい。まずはマクロライドとは どのような薬剤なのかを確認する。