中毒の定義と概念

摘要

人間と毒との関わりは古く，有史以前から動物毒や植物 抽出物を狩りや暗殺，あるいは兵器などとして使用してきたと想像される。紀元前1，500年頃に書かれたエジプトの 医学書（エーベルス.パピルス；Ebers Papyrus)にも， 毒ニンジン，アコ二チン，ァヘン，および鉛などの重金属 をはじめとした毒物について記されている。その後，多く の毒物が様々な事件を引き起こしてきた力少なくとも現 在の先進国では以前ほど大規模な中毒事故が起こらなくな つたような印象を持っているむきもあろう。確かに，例え ばダイォキシン類（歴史的にはPCBが原因とされていた力s， ダイべンゾフランを主としたダイォキシン類が原因である ことが認定されている）が引き起こしたカネミ油症事件は 1968年のことである。これに比べてあまり知られていない 力，ほぼ同時期にカネミ油症と同じライスオイルを混入さ れた飼料により約49万羽のニヮトリが死亡したダーク油事 件も発生している。しかし，ダイォキシン類の飼料混入に よる事件が1999年にベルギーで，そしてごく最近の2010年 にもドイツで発生し，家畜や家禽の大量処分や大規模な農 場閉鎖につながる大問題となった。