乳牛の繁殖管理における子宮内膜炎診断の重要性ならびに排卵同期化処置におけるd－クロプロステノール製剤の応用

摘要

現在の牛の繁殖管理の課題として，牛群の大規模化と高泌乳化が挙げられます。発情発見率および受胎率が下がっているため，農家の生産性に直接結びつく妊娠率（＝発情発見率×受胎率）も低下しています。　平成18年に北海道NOSAI連合会が発表した，共済の支払い対象の集計データによると，乳用牛の繁殖障害で最も多いのは黄体遺残（32％），2番目は卵巣静止です。また最近はPGF2。（以下，PG）あるいはGnRHといった製剤が非常に多く使われています。子宮内膜炎は子宮疾患のなかで最も多いものですが，繁殖障害全体では7％です。これだけをみると，子宮疾患はそれほど重要ではないと思われるかもしれません。しかし，実際の牛群で空胎日数を引っ張っているのは，授精できない，またはできても受胎できない一部の牛であり，特に後者の多くは子宮に問題があると考えられ，生産性を低下させる子宮疾患は大きな問題となります。子宮疾患を的確に診断し，必要に応じて治療を行い，異常がないことを確認したうえで授精対象牛とすることが繁殖管理成功の秘訣です。