筋膜と筋鞘でみる筋病変

摘要

牛の筋疾患で重要な疾病は物理的要因によるものと代謝的要因によるものに大別される。 前者は筋断裂や起立不能による二次的な筋変性であり，後者は麻痺性筋色素尿症や白筋症である。 今回は超音波画像で確認しやすい筋断裂を取り上げる。 筋断裂が起こる場所は第一に後肢の内側の諸筋，特に内転筋と薄筋である。 いずれも骨盤と大腿骨を後肢の内側で結び付けるもので，後肢を外側に滑らせて股関節を開きすぎた場合に断裂する。特に乳熱や分娩後のグラム陰性梓菌によるいわゆる甚急性乳房炎∴泌乳最盛期の低カルシウム血症で発生しやすい。 これらは，いずれも低カルシウム血症のため開きかけた後肢を元に戻す筋の収縮が不完全なために起こると考えられる。