高温環境が及ぼすさまざまな生理的影響

摘要

暑熱期の搾乳量の低下は，主として飼料摂取量の低下が原因である。 では，飼料摂取量低下の原因は何か。 恐らく体温の上月が大きく関与しているであろう。 摂取した飼料をルーメンで嫌気発酵し，下部消化管で消化吸収する。吸収した各種栄養素は，体の維持と牛乳生産に回される。 このすべての段階においてエネルギーの変換効率が100％でははないので熱エネルギーが発生する。 この発生した熱エネルギーをすべて体外に放出できなければ，どんどんと体内に蓄積されて体湿の上月を招くことになる。 一定以上の体温上昇は個体にとって非常に危険であるので，山部は飼料摂取量の抑制という形で現れてくる。 すなわち，泌乳牛を取り巻く環境湿度と湿度を制御して，体外への熱エネルギー放出量を十分に確保できれば，飼料摂取量は低下せず，搾乳量も低下しないことになる。 このために最も安価で効果的な方策は，日陰の確保，強制送風，散水，細霧発生などであり，すでに多くの畜舎で行われている。 今後，地球温暖化傾向が続くなかで，暑熱期におけるより一層の生産性維持増加対策の開発が急務であり，搾乳牛を構成している細胞の暑熱生理に基づいた，これまでとこは異なる観点からのアプローチが重要になってくる。