馬の外肛門括約筋内へのポッリヌス毒素B型の注入が肛門圧に与える影響

摘要

グラム陽性細菌Clostridium botulinumが産生する毒素は哺乳類の横紋筋の一過性化学性脱神経を引き起こす。 この毒素は，シナプス間隙へのアセチルコリン放出を調節して－いるコリン作動性シナプス前終末内の特異な蛋白質に結合して，筋の活動と機緒を消失させる。 この効果は，新しい運動終板の再生と関係があり，哺乳類では2～4カ月間持続する。 ボツリヌス毒素の局所注入はヒトの障害の治療に用いられており，例えば，内月Ⅰ門括約筋および外肛門括約筋へのボツリヌス毒素A型の1～2匝lの注入によって，肛門管を弛緩させ，慢性肛門裂傷を治癒している。 出産時に生ずる牝馬の会陰裂傷が外科的修復後に裂閲することが多いのは，直腸内に蓄積した糞によって切開断面に圧が加わるためである。 そこで，我々は，会陰裂傷馬の外科的修復前に馬の外肛門括約筋内へボツリヌス毒素B型を局所注入すれば，肛門庄は低下し，術後の裂開の頻度は低下するであろうと考えた。