精子発生と内分泌

摘要

近年の生殖工学は家畜の生産性を飛躍的に向上させるものとして大きな期待がかけられているが，胚移植，体外受精，胚の分割，体細胞クローン動物および遺伝子組み換え動物の誕生にしろ，雌側（卵子および胚）に研究の重点が置かれてきた。雄に関しては，従来，精子の凍結保存については精力的に研究が行われてきたものの，家畜の精子発生（spermatogenesis）の調節機序に関しては手薄の感は否めない。 しかしながら，希少家畜の増殖，保全を考えた場合には，in vitroで精子形成の再現は有力な手法のひとつになり得るだろう。 そのためには，実験動物から得たデータは大きな助桝こはなるが，実際に家畜の体内でどのように精子発生が調節されているかを明らかにしていくことが必要となる。 この稿の前半では，雄ウシの精子形成過程における内分泌的な関与について概略を記し，後半では家畜の雄の生殖機能の人為的調節の試みを紹介する。