卵胞発育の内分泌的調節と人為的制御

摘要

近年の生殖工学の進歩は，胚移植に始まり，体外受精，胚の分割，体細胞クローン動物および遺伝子組み換え動物の誕生と目覚ましいものがある。 このような研究の有用性は基礎研究のみにとどまるものでなく，家畜の生産性を飛躍的に向上させるものとして大きな期待がかけられているが，いずれも多数の卵子または胚を得ることが大前提であり，産業動物においてはこの点が大きな陸路になっている。 と畜場で得られる卵巣から卵子を採取することはひとつの解決法ではあるが，生体から十分な数の卵子または胚を得る技術に対する要請は依然として高い。 また，胚移植の普及に伴い，過剰排卵処理の繰り返しによって，僕胚牛では卵胞嚢腫などの卵胞発育疾患の発生頻度が高くなつているともいわれている。 一方，生体レベルでの卵胞発育の調節について考える上で，最近10年間で重要な発見がいくつかなされた。 ウシに限っていえば，例えば，①エコーカメラによる卵胞の発育パターンの詳細な解析，②卵胞の発育に重要な役割を果たしている卵胞刺激ホルモンの調節因子であるインヒビンの同定とその内分泌的作用の解明などが挙げられる。