畜産地帯の飼料柵等における無機元素の土壌中での動態解明

摘要

畜産地帯の飼料畑等における，無機イオンの土壌中での動態を解析した。 研究対象地域の地形は，高位から台地，段丘，沖積面にわたる5つの面から成った。 土壌は黒ボク土で，表層から深層（1m以探，5m前後まで）に至る土壌の層序は，台地では上から黒ボク，ローム，阿蘇4風化物，上位段丘では黒ボク，ローム，段丘礫層，下位段丘では黒ボク，ロームの順であった。 対象地域の農家圃場260点を調査し，細密土壌図を作成するとともに表層土の化学性の分析を行った。その結果，pHの上昇や交換性塩基量の増大が起き，土壌診断基準値を越えている圃場が多く，家畜ふん尿による負荷を示唆していた。 九州農試場内における飼料作物の枠栽培試験でも，ふん尿多施用に伴い表層土の交換性塩基や硝酸態窒素の増大がみられた。 これらの物質の深層土壌での動態を解明するため，新規に簡易型深層土壌採取機を開発し，対象地域の飼料畑における深層土壌中の水溶性イオン量を測定したところ，各イオンの土壌中の垂直分布はイオン種ごとに異なり，また土壌層序と密接に関係していた。