牛臨床におけるステロイド剤

摘要

ステロイド剤ほど広範囲で多種の適応症をもった薬はない。これはステロイド剤の原点であるグルココルチコイド（副腎皮質ホルモン）の生理作用が多岐にわたり，ステロイド剤がその作用から脱し切れていないことによる。特異性がないということがステロイド剤の大きな特徴である。　家畜診療の編集部から，「乳房炎，肺炎，腸炎，皮膚炎，出生時の虚弱子牛，分娩誘起などで日常的に副腎皮質ステロイド製剤を使用しているが，経験的な部分が多い。薬効の裏付けとなる薬理作用と使用の問題点についてまとめてほしい」，というご依頼をいただいた。そこで本稿では，グルココルチコイドの生理作用を述べ，次に各疾病にステロイド剤，特に，デキサメタゾンを使う場合の薬効の裏付けをまとめた。