牛第四胃変位の手術法の違いによる外科侵襲の検討

摘要

近年、畜産分野での動物に対する福祉の重要性が高まり、家畜である牛、豚、鶏などの飼養形態や飼育環境に関する改善が多くみられ、畜産関係者の意識も向上しているのが現況である。 しかし、北欧ではさらに進歩し、動物に対する直接的な福祉として、除角、去勢、断尾は行わない獣医療が一般的であり、さらに腹部を大きく切開した牛の生産物は消費者に敬遠されている。 よって、わが国との動物福祉に対する意識には大きな格差がある。 したがって、この格差を小さくする獣医療法、つまり侵襲の少ない技術や手術法の確立が急務とされている。そこで今臥増加傾向にある牛第四胃左方変位において、演者らが確立した小さい切開創で整復する腹腔鏡手術（図1）と、従来の腹部を大きく切開する右膝部切開術（図2）との外科侵襲の比較検討を行ったので、その概要を報告する。