「犬膀胱移行上皮癌における超音波検査による膀胱壁浸潤度評価」

摘要

犬の膀胱の移行上皮癌（Transitional cell carcinoma ： ТСС)は膀胱粘膜を構成する移行上皮細胞に由来する 腫瘍であり、犬の全悪性腫瘍の2 %、膀胱に発生する悪 性腫瘍の90%以上を占める上皮系の悪性腫瘍である。そ の浸潤性は強く、転移率が高いことが特徴としてあげら れるひ]。一方ヒトの膀胱癌の80%は膀胱壁浸潤を伴わ ない表在性タイプであり[2、3]、多くは良好にコントロー ルすることができる力、浸潤性膀胱癌の場合は、犬と同 様に予後は一般的に悪い[4]。また、ヒト膀胱癌では腫 瘍の膀胱壁内浸潤度に加え、広がりも予後に深く関連し ており、進行したTNMステージは生存期間の短縮につ ながる[5]。したがって、ヒト医療において術前に正確 に膀胱壁内浸潤度を評価することや腫瘍の広がりを評価 することは適切な治療法の選択や予後判断を行う上で極 めて重要であり、近年、超音波検査は正確なTNMステー ジ分類を行う上で着目されている[6—10]。上述の通り犬 膀胱ТССはヒトの膀胱癌よりも浸潤性、転移性が強く 、 術前に超音波検査による正確な全身評価を行うことは、 適切な治療選択や予後判断を行う上で極めて重要と考え られる。しかしながら、これらの評価に関する検討は獣 医学領域では十分なされていない。E-mail, khanazono@vetmed.hokudai.ac.jp