水族館のィルカ問題をみて

摘要

最近、世界動物園水族館協会が日本動物園水族館協会 に対して、和歌山県太地町で行われているィルカの追い 込み漁からのィルカ入手を理由に、会員資格の停止を通 告してきたと言うニュースがマスコミをにぎわしました ね。マスコミは太地町に行って「ィルカ漁を批判するの は反捕鯨運動の延長でけしからん」と言ったり、「ここ のィルカは健康で状態も良い」と強調したりしていまし たが、私にはこれはお門違いの反応に見えました。もち ろん世界動物園水族館協会の処置は太地町の追い込み漁 を批判した上での話で、これは反捕鯨団体の圧力による ものであるのは確かなのでしょう。そしてこれは日本の 動物園と水族館が作っている団体に向かって、ィルカ追 い込み漁からの入手に対する対応を批判しての処置です。 ですが、私には単に追い込み漁が残酷だからと言うだけ の理由ではないように思いました。欧米が主流の世界動 物園協会が反捕鯨論者の意見に乗って、日本のィルカ飼 育施設にィルカの扱いについて批判したのには別の側面 もあるのではないでしょうカゝ。日本ではこの問題がィル 力の追い込み漁にばかり目が行っていますが、私にはィ ルカ飼育施設のィルカに対する姿勢を批判しての行動の ように思いました。私が動物園の世界に入ってまもなくの昭和40年代の後半に、ヨーロッパでは反ィルカ飼育連 動の嵐が吹き荒れ、これが反動物園運動に発展しそうな 状態となりました。ィルカは飼育下で長生きしないこと 力5'批判され、更には野生動物を捕まえてきて見世物にす る動物園は自然保護の対極にある！という見方をされそ うになつたのです。このため、動物園はそれまでの野生 動物の入手方法を一気に変えていきます。その結果が今 の飼育下で持続的に展示できるよう全動物園が協力して 繁殖計画を立て動物を融通しあっていくという方法に なったのです。それまでは世界中で太地町でのィルカの 追い込み漁と大して変らない方法で野生動物を捕獲し動 物園に売ることを商売にしている人たちがいて、そこ力、 ら手に入れた動物を展示していたのです。当時モンバサ の港渡しでキリンが1頭10万円だつたと記憶しています。