ヘテロクロマチン形成時におけるSIRT1によるヒストンメチル化酵素 SUV39H1制御機構

摘要

当初，Sir2タンパク質は，バクテリアからヒトに至るまで，様々な生物種における，遺伝子のサイレンシングに重要な役割を担うことが報告されてきた．また，ヒトでは，そのホモログが現在までに7つ同定され，SIRT1-7と呼ばれ，Sirtuinと総称されている．特にSIRT1タンパク質においては，酵母のSir2タンパク質同様，NAD依存的な脱アセテル化活性を有していることや，p53ヤフオークヘッド因子などをはじめとする転写因子の機能制御，細胞分化や寿命や老化の制御に関わることが報告され，またさらに，アルツハイマー病などの重篤な疾病の発症にも関与していることが明らかとなり，それら疾病の治療のターゲットとしても注目されつつあり，近年，生命現象への基本的な理解に対する側面のみならず，疾病予防や治療など応用的な面でもさらなる着目をあびつつある．また，SIRT3に関してはミトコンドリアにおける機能制御，SIRT6においてはNADを基質とする酵素払貯－1と同様，損傷DNAに対する修復機構に関与することなど，Sirtuinシリーズにより制御を受けるNADを基質とする本反応は，実に多様性を含蓄するものであると想像される．