残留性有機汚染物質の安定同位体比解析-分析法からダイォキシン天然生成解析への応用まで

摘要

残留性有機汚染物質（POPs)は様々な発生源から放出され，一旦環境中に放出された汚染物質は，拡散移動する間に反応や分解，吸着，生物濃縮等の過程を経ていくため，発生源に遡ることが困難な場合が多々ある。しかし，環境中に放出される汚染物質に安定同位体比という目印を付けることができれば，その目印を追うことによって汚染物質の量や移動経路を解明することが可能である"。近年，安定同位体比分析技術の発展に伴い， POPsを対象とした環境化学研究分野でもその利用は高まりつつある。人工化合物であるPOPsの炭素安定同位体比は，その原料（炭素源）と製造法に密接に関係する。 POPsのほとんどは石油化学製品であることから，石油から得られた基礎原料をもとに合成され， 次いでこれら化合物は，工業製剤や製品添加剤として利用される。