軽種馬産業集積産地における大規模企業的経営の事業構造－大規模企業的経営と産地競馬の関係性に注目して－

摘要

日本の軽種馬の生産は北海道日高地域に集中している。 日高地域は，日本の軽種馬生産者の76．0％（隣接する胆振、十勝地域を加えると83．3％），生産頭数の71．6％（同95．8％）を占めるに至っている。 また，日高地域には，軽種馬生産部門のみならず，獣医，装蹄、削蹄業，飼料業者，馬具業者，競走馬保険業者など多種多様な関連産業が集積し，一大軽種馬産業地域を形成している。 日高地域の総就業者48，669人のうち22．0％、10，548名が直接的な軽種馬関連産業に就業している状況となっている。 さらに，目高地域の商業，建設業，飲食店，市街地，ホテル、観光業，運送業などは，馬産地日高に存在することにより，馬産と密接な関係にある（註1）。 このように，日本最大の馬産地日高地域は，軽種馬生産を中心として各関連産業の集積産地として成立しているのである。 さらに，日高地域は，その集積構造の中で大規模企業的経営層が多数の家族経営層を相手に多角的な事業（種牡馬事業，産地育成，繁殖牝馬の仔分、預託など）を展開することで成立している。 この意味において，現在，産地に浸透している構造不況の影響は，小規模家族経営層だけではなく，大規模企業的経営層にまで波及していくものと考えられる。 このことは，日本最大の馬産地日高地域全体に壊滅的な影響を与えることを意味する。