風味良好な低抗原性蛋白分解物の工業的製造法の開発

摘要

牛乳は我々人類が古くから食してきた良質な栄養源で あり，飲用乳，発酵乳製品，あるいは多くの食品の素材 として利用されている。わが国においては，明治時代初 期の文明開化とともにその利用が広まり，大正時代半ば には，牛乳を主要な原料とする育児用ミルク（粉乳）が 製造されるようになった。育児用ミルクは，その後，乳 業会社を中心に，栄養成分組成や感染防御機能などの面 で改良が加えられ，現在では何らかの理由で母乳が飲め ない乳児において，その正常な発育を維持する上でなく てはならないものになっている。一方，牛乳は人にとって異種の食物であり，特に消化 吸収能や免疫機能が未熟な乳児において，その蛋白質の 異種性が原因となつて牛乳ァレルギ一を弓Iき起こすこと がある。牛乳アレルギーを治療するためには，食事から アレルゲンである牛乳蛋白質を除去することが必要であ る。この場合，大豆乳などの代替蛋白質を用いた治療も 可能であるが，牛乳アレルギーに罹患した乳児は他の食 物抗原にも感作されやすいとされている"。そのため， 牛乳アレルギーの治療には，蛋白質自身の抗原性を可能 な限り除去した窒素源を用レ、た治療乳が有用である。