タンザニア南西部における在来農法を基本とした地域発展

摘要

タンザニア南部の約2／3を覆うミオンボ林は可耕地でありながら永く開発の手が及ばなかったが、近年、食用、換金作物生産、燃料材生産、また場所によっては家畜放牧の需要増に応える形でミオンポ林の伐採、開発が急激に進んできている。 しかし、こうしたミオンポ林の伐採や土地利用圧の増加は、土壌侵食、栄養塩の損失、水不足等による土地の荒廃をもたらし、むしろ土地の潜在的農業生産力を低下する方向へ導き、農業生産の持続性、地域環境や住民の生活を脅かすものとなってきている。 他方、ミオンポ林常には地域の自然、社会環境に応じた独特の農法が古くから展開され、少くともsubsistenceレベルでは持続的な農業が営まれてきたことはよく知られている。タンザニア南西部のルアマ州ムビンガ県の山地城に住むマテンゴの人びとが展開している「‘ngolo’農法」はそうした在来農法の一つであり、土壌侵食を受けやすい土地条件下にあって永く多くの人口を維持してきた。 このような在来農法のシステムが、人間活動と自然環境の関わりや適切な地域発展のあり方を考えていく上でいくつかの手掛かりを与えてくれるものと考えている。本研究では、（1）「‘ngolo’農法」の実態、（2）「‘ngolo′農法」の持続性評価、（3）「持続可能な地域発展」を評価するためのシステム、ダイナミックス、モデルの展開、（4）対象地城の地域発展構想に関する考察、の4点に焦点を当て論じる。