本稿では,ブラジルにおける男女間賃金格差を,労働市場における男女差別という観点から議論する。ブラジルにおいては,女性の教育水準は男性よりも高く,教育機会に関する男女差別はないと考えられる。しかし,女性の高学歴が労働市場において職業決定や賃金に反映されているかは明らかではない。本稿では一般に賃金格差の要因分解によく用いられるBlinder-Oaxaca分解を拡張したBrown,Moon and Zoloth(1980)の方法に基づき,賃金格差を同一職業内での賃金格差と職業構成の差による賃金格差とに分解する。さらにこれらの賃金格差の要因から男女の属性の格差により説明される部分を取り出し,賃金格差のうち男女差別によると考えられる部分がどの程度であるかを計測する。分析の結果,ブラジルにおいては女性の高学歴が賃金に反映されておらず,労働市場において男女差別が存在することが明らかとなった。また,女性は高い賃金を得られる職業に就ける機会において差別を受けているわけではなく,同一職業内の賃金において差別を受けているということが明らかとなった。
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