非遺伝子損傷性ストレスによる遺伝的不安定性と発がん

摘要

オカダ酸は双鞭毛藻類（Dinoflagellata）が産生し，黒磯海綿等に蓄積され，また非伝染性下痢性貝毒としても知られるものである。 藤木らがマウス皮膚二段階発がんにより腫瘍プロモーター活性を発見し，その受容体が細胞質にある事を示唆した。 我々はホルポールエステル（TPA）のPKC活性化機構にもとずきraf蛋白を受容体と推定し，NIH3T3細胞の活性化raf，retやrasトランスホーマントをオカダ酸存在下で培養し，悪性細胞の形態が正常細胞のそれに戻ることを見出した。 その間にオカグ酸が蛋白質セリン／スレオニン、ホスファターゼの特異的阻害物質であることがわかり，且つ，我々の研究で，導入した外来性がん遺伝子が極めて高率に細胞から排除される事を見出した。 オカダ酸はサルモネラ菌を用いたAmes法ではラット肝ミクロソームおよび上浦を含むS9 mixの有無に拘らず変異原性を示さない。 最近DNA付加体が検出されたが，そのレベルは低く，オカダ酸のDNA変異原性はDNA付加体生成を通してというよりは，極めて強いホスファターゼ阻害作用にもとずくリン酸化レベルの異常というストレスにより，誘発されると考えるのが自然であろう。