バイオフューミゲーションに関する近年の研究と技術開発の動向

摘要

アブラナ科植物を輪作したり土壌に鋤き込んだりする と，後作の土壌伝染性病害などが軽減される現象が以前から知られていた（Papavkas, 1966 ；國安，1989 ； Angus etal.，1991)。この現象（防除技術）は，1994年ころか らバイオフューミゲーシヨン（Biofumigation ：生物的 くん蒸）と呼ばれるようになった（Angus et al.， 1994 ； Kirkegaard and Sarwar, 1998 ； sarwar andKirkegaard, 1998)。防除対象は土壌病原菌，線虫，土壌害虫，雑草 に及び，その作用機構としては，アブラナ科植物の茎 葉、根、種子に含まれるグルコシノレート（glucosino-late ：力ラシ油配糖体）が土壌中で加水分解されて生じ るイソチオシァネート類（揮發性の殺生物性物質）（図-1) とその他の硫黄関連化合物が，土壌中の有害生物の密度 低下や活性低下に寄与しているという見方が一般的であ つた(Brown and Morra, 1997 ； Morra and Kirkegaard, 2002) oこれらイソチオシァネート類が，土壌くん蒸剤 として使われているメチルイソチオシァネートと似てい ることから，オーストラリアのKirkegaardらカ*バイオフ ユーミゲーションという言葉を考案したのである。