養液栽培におけるPythium根腐病の発生生態と防除

摘要

養液栽培は，培養液を作物の根部に供給して栽培する 方式で，養分吸収も制御でき，作物の生育も早く，高品 質の収穫物が得られるのが特徴で，導入する農家も増えて，栽培面積は，年々10%割合で増加している。最近 では，10ha以上もある大型施設や閉鎖系の植物工場に も養液栽培が導入されているが，養液栽培には，培養液伝 染性の病害による被害があり，大型化した施設では,被害 が発生すると大きな問題となる。培養液伝染性病害は,養 液栽培の発展にもかかわる問題であり,防除を含めて病害 の発生を抑制する栽培環境の改善も考えていく必要がある。養液栽培で発生する病害は，栽培の方式によって異なり，湛液式（水耕栽培）ではPythittmやPhytophthom属 菌による被害が，固形培地を用いるロックウールなどで は，Pythium属菌にカロんて，Fusarium属菌による被害 が多く見られる。また，青枯病菌による被害は，湛液 式，固形培地方式で共通して発生が認められ，これらの 病害以外にも，トマト黒点根腐病(Colktotrichum atra-mentarium)や黒根病(Chalara eiegans < Thielaviopsis basicola):花卉類やハーブ類に発生)のように土耕栽培では それほど大きな被害とならない病害が多発することもある。