我が国に分布するコムギ縞萎縮ウィルスの ゲノム配列から見た多様性

摘要

小麦の自給率は10%台で推移している力s，めん用小麦'きたほなみ'や超強力小麦'ゆめちから'等特色のある 品質の良い小麦品種が開発され，さらなる自給率向上に 向け安定生産の努力が続けられている。小麦の安定生産を阻害する要因はいろいろあげられる力s ，土壌伝染性ゥ ィルス病の発生もその一つである。近年，小麦の主産地 である北海道においても，小麦の過作化などにより，土 壌伝染性ゥィルス病の一つであるコムギ縞萎縮病の発生 が目立つようになった。'ゆめちから'は強い縞萎縮病抵 抗性を示すため，縞萎縮病対策としても期待される一 方，'ゆめちから'の抵抗性はウィルスの感染を完全に防 ぐものではなく ，気象条件などによっては発病する場合 もある（大木-眞岡，2014)。ウィルス抵抗性の詳しい 仕組みがわからない状況で，抵抗性品種のみに頼つたゥィルス防除は抵抗性を打破する新系統のウィルスの発生 を助長しかねない。そこで，筆者らは，小麦のウィルス 抵抗性の作用機作を明らかにすることを最終目標に，ま ずゥィルス側の病原性にかかわる因子を明らかにするた め，日本各地から採集したコムギ縞萎縮ウィルス(meatyellow mosaic virus ： WYMV)のゲノム配列の解析を行 つた。その結果，日本におけるWYMVの遺伝的多様性 の一端が明らかとなつたので，本稿でご紹介したい。