千葉県におけるスクミリンゴガイの発生状況と防除対策 および予察法の検討について

摘要

スクミリンゴガイ{Pomacea canaliculata)は1980年代に養殖を目的に外国から日本各地に導入されたが，管 理の不徹底や養殖の断念により放棄されたものが野生化 し，水稲やレンコン等の農作物を加害する侵入害貝とし て問題になっている。千葉県では1986年に野生化が確認された。当初は一 部の地域での発生にとどまり，水稲への被害もほとんど なかったが，近年は水路からの侵入や，暖冬の影響等に より県北東部の海岸地帯を中心に発生面積や被害が拡大 してきている。2014年における千葉県の発生面積は 7,900haで，水稲作付面積（60,900ha)の約13%にあ たる。スクミリンゴガイの発生程度には年次変動が見ら れ，これには冬期の気温が影響していると考えられてい る。気温とスクミリンゴガイとの関係については，これ までに冬期の低温が本貝の大きな死亡要因になり（清 田-奥原，1987；大矢ら，1987)約10°C以下の積算低 温量が増えることによって貝の死亡率が高くなること (菖蒲ら，2001)や，0°C以下の低温が大きな淘汰要因と して作用すること（大矢ら，1987)が報告されている。 千葉県においても年次別スクミリンゴガイの発生面積に 冬期（平均）気温が影響していることが示唆された (図-1)。