ベントグリーンにおけるアントシァニン斑形成要因の解析とその軽減策第3報アントシァニン色素の生成要因の解明と生態、生理的機構

摘要

本報では，ベントグリーンのアントシァニン色素斑形成 に関与する気象要因である低温，可視光，近紫外線の影響を 明らかにするために，き低温下で可視光，近紫外き泉の透過 率カミ異なる資材を用いた被覆試験を行った。その結果，アン トシァニン色素は冬の低温下で生成されるせ,日中の近紫外 線によって誘導されることが近紫外線強度とアントシァニン含量との一次相関から示された(Table1，2)。同様の結果は， 近紫外線強度を4水準に変えたポット試験からも立証された (Table 3)。紫斑の色調程度を異にする芝生から採取した葉について 光合成速度を測定し，測定葉から抽出したアントシァニン含 量と光合成速度との関係をみたところ，両者間に負の有意な 相関関係が認められた。このことはアントシァニン含量によ つて光合成速度が抑制されることを示している（Fig. 1)。 光合成速度の低下は，アントシァニンが可視光をよく吸 収することによっていることが測定葉から抽出したアントシ ァ二ン濃度と可視光透過率との相関解析から判明した（Fig. 2)。 アントシァニン抽出液の近紫外線吸収率は高く，アント シァニン力《葉肉組織の紫外線障害防御の機能を果たしている こと力5推定された（Fig.2)。 アントシァニン抽出液の太陽光照射による液温測定から アントシァニン濃度と液温上昇との間に正の相関関係力s認められた（Fig. 2)。この結果は，アントシァニン色素が葉温を 高める効果のあることを示唆している。紫斑葉と非紫斑葉から抽出したクロロフィル瓶アント シァニン液の光吸収スペクトルを検討した結果（Fig. 4)，前 者のスペクトルは同一であつたが，後者では，紫斑葉の抽出 液の吸又スぺクトルカs全波長域で高く ， 500 nmに吸J]又極大が みられた。この結果は，アントシァニンが可視光をカットす ること，吸熱による昇果の大きいことと一致する。 以上の結果から，冬の低温下で生成されるベントグラス のアントシァニン色素の増大は，紫外線P及収による組織障害 の防御，可視光力ットによる光合成の抑制(光化学反応の抑制） と吸熱によるC02還元反応の促進に寄与する生理的適応機構 と推定できる。