ゲノミクスを背景とした作物育種の新展開

摘要

イネのゲノム塩基配列解読から早くも4年が経過しようとしている。塩基配列情報は、イネの遺伝子の単離、同定や機能解析、あるいは比較ゲノム解析などの基礎研究ばかりでなく品種改良の効率化等、応用面でもその貢献は大きい。しかしながら、予測された遺伝子の生物学的あるいは作物学的な機能は、まだはとんどが解明されておらず、ゲノム配列情報を作物の機能解明と改良につなげるためには、イネの有用形質変異と塩基配列の違いを関係づけるさらなる研究資源の充実とそれらの効率的な活用が不可欠である。本講演では、遺伝資源のなかに埋もれている農業上重要な遺伝子を発掘し、形質の理解を深め、さらには優良基幹品種へ発掘した遺伝子を導入する、遺伝資源から改良品種への一貫した取り組みについて、イネを例として紹介し、ゲノミクスを活用したこれからの作物育種研究について考えてみたい。