植物への大気汚染ガスストレスを遺伝子発現から診断する

摘要

地球環境は人類が現れる前は穏やか な変化をしていたと考えられるカ人類の出現後，特に産業革命後の200年 間は人為的活動の結果発生する環境汚 染物質により急な環境変化が生み出 されてきた。そして，このような急激 な環境変化により，近年，植物の生育 に影響が出るようになつてきた。たと えば光化学ォキシダントの主要成分で あるオゾンは，先進国のみならず最近 では発展途上国においても主要な大気 汚染物質の一つであり，これにより野 生植物および作物の生育に顕著な影響 力見られるようになつている"。また，フ ロンガスによるオゾン層の破壊により 地球表面に到達する紫外線の量は年々 増加しており2),これにより植物の生育 P且害が起こることが懸念されている3)。 これら以外にも，植物は塩，乾燥，重金属，強光，高、低温などのさまざま なストレス源にさらされている。植物 はこれらのストレス因子に対してさま ざまな防御機構を発達させている力^ これらのストレスの影響力植物の防御 反応の限界を超えてしまうと植物の健 全な生育を阻害し，やがて個体の枯死 につながる。したがって，このような 環境ストレスの種類や程度を個体への 影響が現れる前に正確に知ることは， 農作物の管理や野生植物の保全に大き く寄与すると思われる。