内臓脂肪蓄積に関連する遺伝子とろの進化

摘要

「肥満」とは摂取エネルギー過剰などにより脂肪組織が肥大化した状態である。現代社会では脂肪組織は厄介 者として扱われがちであるが，人類が「出アフリカ」後に遭遇したさまざまな問題に適応するために重要な 役割を果たしていたに違いない。本稿では，脂肪組織，とりわけさまざまな生活習慣病の元凶として知られ る内臓脂肪の蓄積に関連する新しい遺伝子の機能、進化パターンから，肥満とヒ卜の進化の関わり合いにつ いて考察する。私たちの体はェネルギ一の摂取量が 消費量を大きく上回ったとき，余剰の エネルギーを，皮下や腹腔内に存在す る脂肪組織に中性脂肪という分子の形 で貯蔵する。中性脂肪蓄積量の増大に 伴って脂肪組織が過剰に肥大した状態が肥満であるが，肥満が2型糖尿病， 肝硬変，腎不全や心筋梗塞などの死に 至る病のリスク因子*であること力、ら， 脂肪組織そのものが厄介者として捉え られがちである。しかし，人類進化の 過程で脂肪組織がェネルギー貯蔵器官 として重要な役割を果たしていたであ ろうことは想像に難くない。