土壌から発生する温室効果ガス-メタンと一酸化二窒素

摘要

本稿では，土壌から発生する温室効果ガスのうち，メタンと一酸化二窒素を中心に解説する。これらのガス はいずれも大気中の微量ガスであり，強力な温室効果をもっている。また，土壌微生物により発生、吸収さ れている。農耕地はこれらのガスの主要な発生源であり，その発生削減は重要な課題となっている。主要な温室効果ガスには，最も濃度 の高い二酸化炭素（co_2)のほか，微量大気成分であるメタン（CH_4),—酸化 二窒素（亜酸化窒素：N_2O)，ハロカー ボン類などの人:にガスがある。CO_2, CH_4, N_2Oはもともと自然界に存在し ており，大気中に温室効果ガスがない 場合の地球の平均気温は-19°Cと推定 され，適量の温室効果ガスは生物の生 存のために重要である。しかし現在，人 間活動による温室効果ガス濃度の急増 が地球温暖化を引き起こすことが懸念 されている。世界の温室効果ガスの排 出量は1970年から2004年の間に70% 増加した。産業革命以降の各温室効 果ガスの温室効果への寄与は，C02が 63%, CH_4が18%, N_2O力6%である (図1)。各ガスの温室効果は，「地球温 暖ィ匕係数(global warming potential,GWP)」というCO_2を1としたCO_2換 算の値で表される。CH_4およびN_2Oの GWPはCO_2よりも非常に火きいため (表），これらのガスの濃度増加は微量 でも大きな影響をもつ。また，N_2Oは 成層圏オゾンの破壊物質でもあり，21 世紀において最大の成層圏オゾン破壊 物質になると予測されている。