エラコの受精発生顎

摘要

卵と精子という形のまったく異なった細胞同士が融合することで、新たな生命が誕生する。 このような有性生殖は、ほとんどすべての動物が行っている一般的な生殖様式である。 私たちヒトを含む哺乳類も有性生殖により次世代を形成するが、体内受精を行うため、受精や発生の過程を観察することは容易ではない。 そこで古くから、これらの過程の観察には、体外で受精する海産の無セキツイ動物が用いられてきた。その中でもウニは、配偶子の採取が容易であり、受精-発生過程の詳細な記載がなされてきたこと1）、高等学校の生物Ⅰの教科書にも必ず登場することなどから、学校現場において最もよく用いられている動物である。しかし、季節や場所によっては、生殖期にある個体の入手が困難な場合もある。エラコは、環形動物門多毛綱に属するゴカイの仲間である。 東北地方や北海道の沿岸部では釣りエサとして用いられており、釣具店から入手することができる。 また、その後の飼育も比較的容易に行うことができる。 入手した個体はほぼ1年を通して体内に卵または精子を保持しており、人工的に受精. 発生させることが可能である。 本稿で　 は、このように多くの魅力をもったエ　 ラコの飼育法や卵-精子の扱い方、受精-発生過程の観察法などを紹介する。