シソとエゴマの作物進化を考える

摘要

香味野菜のシソと油料作物のエゴマは同じ種に属する．シソは植物体が小型で，種子は小粒で硬実，ェゴマは大型で，種子は大粒で軟実である．エゴマは一般に畑に播種されて栽培されるが，シソはこばれ種子からの実生が利用される．シソとエゴマは日本の縄文時代の遺跡から出土し，すでに種子の大小に分化がみられる．文献による記録によれば，1世紀後半には中国でエゴマが油料作物として栽培されていた．17世紀に中国で描かれたシソとエゴマの絵からは草型の分化がうかがえる．さく葉標本の調査によると，シソや野生型は中国南東部を中心として分布し，エゴマはその周辺部へ広がっていることがわかった．DNA多型による系統解析の結果，小型の植物である野生型またはシソから大型の植物であるエゴマが生じて各地に伝播していったことがわかった．野生型やシソはすべて硬実であるが，エゴマには軟実と硬実がある．このことから，エゴマの起原は，植物体の大型化と，それに続く軟実化という，2段階の大きな形態変化の過程を経たと考えられる．