卵の識別と卵を数える能力で托卵の書を減らす鳥: アメリカオオバンの知恵

摘要

鳥の托卵（brood parasitism）は，進化の問題を解明するのに格好の研究材料として世界中の研究者が研究に取り組んでおり，興味ある事実が最近つぎつぎに解明されている．そんな最近のホットな話題の一つとして，アメリカオオバン（Fulicia ameicana；図1）の研究がある．この鳥は，北米に広く分布する水鳥で，雌は自分の巣に産卵するだけでなく，同種他個体の巣にも産卵する「種内托卵」をすることが知られている．異なる種類の鳥へ托卵するカッコウなどにみられる「種間托卵」の場合には，托卵される側の鳥は托卵された卵を識別し，排斥することが広く知られているが，種内托卵の場合にはこのような対抗手段をもつことがこれまでほとんど知られていなかった．アメリカオオバンは，自分の卵と托卵者の卵を識別し，托卵者の卵を排斥する能力をもつだけでなく，卵の数を数える能力ももち，自分の卵数を数えて管理することによつても，耗卵による損失を減らしていることが『Nature』誌リに発表された．