精子保護剤と着床促進剤を用いたブタ凍結精子による人工授精法の開発

摘要

我が国において、ブタの年間生産頭数は1，600万頭であり、その出荷額は4，980億円と畜産全体の21％を占めている。産子数を増大させ、かつ母豚の空胎期間を短縮させることが養豚業の生産性向上に重安となるが、いまだに自然交配による種付けが60％を占めている。そのため、種雄ブタの飼育に伴うコスト高、肉質改善などの育種改良の停滞問題があり、繁殖技術の向上が望まれている。近年、高い経済形質を持つ個体の精子による人工授精普及のために、各県の試験場や民間の種畜場が液状精液を販売しているが、急な発情に対応できないこと、保存期間が短いことなど問題点が多い。したがって、凍結精液の導入が望まれているが、ブタ凍結精子の運動性および人工授精による受胎率は、品種、個体、季節環境に大きく依存しており、すべての雄個体の凍結融解精子を用いた人工授精では受胎率が50％以下と低いため実用化にいたっていない。