潜在性乳房炎の早期診断とサイトカイン治療

摘要

乳牛の乳房炎は極めて治りにくい病気のため、世界的に乳牛の難治性疾病の一つとみなされている。 その年間被害額は北海道で約350億円、日本全体で約800億円、世界全体では3～4兆円は下らないと概算される。また、その被害額の約8割は臨床症状を示さないで乳汁中の体細胞数の増加などがみられる、いわゆる潜在性乳房炎である。 特に、黄色ブドウ球菌によって起こる潜在性乳房炎は乳房内組織に微小膿瘍や肉芽腫を形成し、慢性経過をたどりやすく、治癒率が極めて低い。 そこで、乳房内組織への病原体の侵入を早期に発見し、組織に定着する前に治療などの対策を施すことが極めて重要である。 これまで、潜在性乳房炎を早期に、高精度かつ簡便に診断する手法は開発されていなかった。