哺乳類の胚操作と畜産への称用と将来（73）ⅩⅩⅣ．生体外における卵子，胚の恒常性と発生能-とくに，換作月杢の適応能力と限界

摘要

20世紀後半から今日までの半世紀以上にわたる晴乳動物における発生工学研究の成果は生命現象解明への革新的な展開方向と研究領域を切り開いたといえる。 とくに，胚操作は自然では全く起こることのない生物現象を人為的に再現させることに成功した。 さらに，生命現象を人為的に操作して，それをヒトの疾患治療やエコシステムの改善から保全までに利用しようとしている。 現在，胚操作による正常産子への発生割合は動物種によって多少の差異があるものの，クローンの場合，操作総胚数に対して0．1～0．5％の発生率になっている。 正常発生に到らなかった操作胚（核移植胚，ⅠVMFC）のうち50～70％は2細胞期までしか発生せず，残りの30～50％は卵割せず死滅してしまう.卵割した胚のうち，胚盤胞まで到るものは20～50％である。 すなわち，全操作胚の50～80％は途中発生を中止して，死滅してしまう。