農耕地における農薬の動態解析と評価法の開発

摘要

近年，農耕地に投下された農薬成分の一部は拡散や移動によって水系に到達し汚染原因となる可能性が懸念されている1）．欧米ではすでに1980年代後半から大きな進展が見られているが，わが国においてほ，これまで断片的な知見の集積にとどまり，その全体的な解明は比較的最近になってからである2」）．2002年5月に環境省の「農薬生態影響評価検討会」で取りまとめられた第2次中間報告書「21世紀における我が国の農薬生態影響の在り方について」が公表された5）．そして，2005年4月に河川における環境中予測濃度（PEC）算定のための試験法や試験ガイドラインを導入した農薬登録保留基準が施行された．これは，農薬の環境中での予測濃度（PEC）を算出し，これと実験対象種（藻類，ミジンコ，メダカ等）に対する毒性値を比較して生態系への影響を評価するものである．筆者らは，1990年代半ばより農耕地から系外への農薬の流出動態調査および試験法の開発に携わり2」ふ17），それらの成果は，環境省による農薬の公共用水域におけるPEC評価法開発の過程で参考に供された18）．