釧路コールマインに見られる旧坑の閉塞状況と閉塞機構

摘要

釧路コールマインにおいて約50年前に掘削された坑道（旧坑）は，ほとんどが閉塞していた。 閉塞状況を明らかにし，坑道閉塞をもたらした機構について考察した。 得られた主な結果を示せば以下のとおりである。 1．旧坑の閉塞は，空洞内に向かう上下盤の著しい湾曲変形によってもたらされたものが多く，また天盤がブロック状に旧坑内へ貫入することによりもたらされた事例も少なからず観察された。 天盤沈下が下盤隆起より卓越する事例が倍近く多かった。 さらに，単層の縦割れや落石がしばしば見られた。 せん断破壊も見られたが，ごく少数であった。 2．閉塞した旧坑内で著しい湾曲変形を起こした岩石の連続性は比較的よく保たれていた。 3．旧坑を閉塞している岩塊の隙間は，粘土や強度の低下した砂岩や珪質岩あるいは充填材などで埋められた状態になっていた。 4．充填作業に伴う大量の水の供給は坑道周囲岩盤の含水比を増加させた。 また，坑道壁面の含水比は，通気の湿度が季節毎に変化することに伴なって変化した。5．1．で述べた著しい湾曲変形は，岩石の含水比の増加に伴う剛性や強度の低下によって生じたと説明することが可能である。 6.数は僅かであるが，ほとんど変形していない非閉塞の旧坑も存在した。 これらの非閉塞の旧坑には，充填物が届いておらず，旧坑周囲の岩石は含水比の増加が最小限に保たれる状態が維持されたと推測される。 なお，旧坑を閉塞している岩塊の集合体は地質学的な圧密の過程にあると考えられ，その材料力学的特性や透水性を明らかにするために原位置計測や室内試験を実施した。 これらの結果については，本研究で得られた知見の工学的応用とともに，稿を改めて述べることにする。