ロシア経済の現状と課題--景気後退と成長戦略

摘要

石油•天然ガス輸出に依存するロシア経済は，2014年ウクライナ危機以降の経済制裁と対抗制裁によって マイナス成長に落ち込み危機に至っている。この危機は外的ショックよりも伝統的な成長モデルの機能不全を 示しており.それは油価と国際金融に依存する成長モデルの弱点を意味する。これに対し，政府は国内金融の整備のために脱オフショァ化政策を実施しているが，なお成功したとは言い難い。また，経済制裁を契機に， 輸入代替産業政策を強めており，際に食品産業や金属で効果が観察され，国産べースの成長モデルを導くと 期待されている。しかし，輸入代替は国内の技術，スキル基盤の脆弱さと金融システムへの不信によって効果 は限定的であり，その反転さえ迫られている。伝統的成長モデルを新しい成長戦略に転換するという課題が重 視されており，外貨保有の縮小と国债增加傾向から.成長モデル転換のための国民の合意形成が緊急に重要な 課題として浮上している。