米中新冷戦下の安全保障貿易管理

摘要

米中新冷戦は一方で経済的な対立であり，他方で技術の優位性をめぐる争いでもある。その技術の優位性を維持するために安全保障貿易管理を実施し.他国への技術移転を管理しなければならない。伝統的に安全保障貿易管理は製品のスペックに基づいて軍事技術と民生技術を区別して管理してきた。しかし，現代の安全保障貿易管理は軍事技術と民生技術の区別が困難な軍民両用性を持っている。なかでも安全保障上重要となる新興技術はどのような形で軍事利用されるかが明らかではないため管理が困難である。また，5Gにみられるように安全保障貿易管理を有効なものにするためにも，製品の競争力を維持しなければならない。安全保障貿易管理を考える上で，安全保障上のリスク，他国製品を排除することによるコスト，そして技術を導入する便益の三つのバランスを取ることも難しい。そhな中で日本は生産過程の上流となる技術を磨き，技術の優位性を維持し，国際的な標準を設定する力を得ることで，安全保障貿易管理を有効にしていくという施策が必要となる。