プレグジッ卜後のヨーロッパ： 英EU離脱合意への反発と将来の展望

摘要

英政府とEUが合意した離脱協定案は英国議会で3度も否決され，英国政治は混迷を深めている。その最 大の要因は.第1に英国のEU関税同盟への残留により英国が外国との通商協定を結べない問題，第2に北 アイルランド国境に「ハードな国境」をつくらないために，北アイルランドをEU単一市場に残す（アイルラ ンドとの一体性の確保）措置への反発である。単一市場に残る北アイルランドと大ブリテン島の間に経済的国 境が走ることになる。英国はそれを短期間に限り認める方針だが，EUは英国との共同決定を条件としてお り, EUに拒否権があるので，英国の一体性分断が長期化すると議会の反発が激しい。次に, 英国離脱後の地 政学を大胆に考えてみる。英国が米政権と連携して反EUに動く可能性がある。米英ロシアに包囲されるEU を想像してみる。次に中国要因を加える。EUの東西および南北の分断に中国は成功した。傍若無人な企業進 出を進める中国に独仏の反発は強まっているが.分断されたEUは中国に強い態度を貫くことは難しいかもし れない。中国とEUの連携が進み，米国に対抗する構図もありうるのではないだろうか。