新地平を模索する中南米

摘要

中南米地域にとって2019年は騒乱の年であった。世界各地で発生した政府への抗議運動の影響は中南米にも波及し，優等生と言われるチリでも抗議デモが過激化したことは関係者に衝撃を与えた。中南米の騒乱の背景には，経済の長期低迷のほか，成長の果実の多くを一部のグループが享受する社会のシステムがある。資源ブームの終焉とともに中南米は長期低迷の時期に入り，第2の「失われた十年」を迎えている。左派ポビュリスト政権も市場志向の政権も経済運営に苦慮し，国民の期待と市場の圧力の狭間で最適解を模索している。中南米諸国は.世界の政治が多極化するなかで変容する地域協定.米中覇権争いの激化への対応にも迫られている。一段と不安定化する中南米とのビジネスには，柔軟な発想と厳格なリスク管理が必要とされている。