青森県下北半島で生育したヒノキアスナロの木材性質

摘要

Annual ring width, basic density and compressive strength parallel to grain of Hinokiasunaro (Thujopsis doiabrata var. hondae) were investigated for plantation- and naturally-grown trees in Shimokita peninsula, Aomori, Japan. Although radial growth rate of plantation-grown trees was two times faster than that of naturally-grown trees, there was no significant difference in basic density between the two grown conditions. This result suggests that effect of radial growth rate on basic density is small in this species. Though no significant correlation coefficients were found between annual ring width and compressive strength, compressive strength of plantation-grown trees showed slightly smaller value than that of naturally-grown trees.%本研究では，ヒノキアスナロ人工林材および天 然林材の木材性質の違いを明らかにすることを目 的として，青森県下北半島の人工林1林分（人工林），および天然林2林分（天然林AおよびB) より得られたヒノキアスナ口について，年輪幅， 容積密度，気乾密度および縦圧縮強さを調査した。 得られた結果は，以下のとおりである。1) 人工林で成育した個体は，天然林と比較して 約2倍の平均年輪幅を示した。その結果，年 輪数が林分平均で60〜90少なかったにもかか わらず，天然林で成育した個体と同等の直径 に達していた。2) 容積密度は，0.34〜0.46g/cm~3の範囲にあり， これらの値は，人工林，天然林ともに既往の 研究とほぼ同等の値であった。また，容積密 度については，人工林と天然林AおよびBと の間に有意差は認められなかった。3) 人工林および天然林における縦圧縮強さの最 小〜最大値は，それぞれ25.6〜46.3 MPa, 31.5-55.5 MPaであり，人工林材の縦圧縮強 さは天然林材ょりもやや低い値を示した。4) いずれの林分においても，試験片の年輪幅と 気乾密度または縦圧縮強さとの間には，有意 な相関関係が認められなかったことから，人工 林，天然林に関わらず，肥大成長速度がこれ らの形質に及ぼす影響は小さいと考えられた。5) いずれの林分においても，気乾密度と縦圧縮 強さとの間に，有意な正の相関関係が認めら れた。このことから，ヒノキアスナ口におい ては，天然林および人工林に関わりなく，気 乾密度が縦圧縮強さを推定するための指標に なると考えられる。