大土かぶり下でのトンネル挙動と初期変位計測: 中央新幹線南アルプストンネルにおける事例研究

摘要

トンネル掘削時の変位計測は，切羽近傍の地山状況の評価や支保の妥当性判断のための有益な情報を提供する.赤石山脈の堆積岩地山を掘削する南アルプストンネル広河原斜坑では，初期変位の取得に重点を置いた密な変位計測を実施しており，結果を大きくニつの目的で活用している.一つは，切羽開放後の初期段階で最終変位を予測すること，もう一つは，変形の傾向から切羽周辺の，異方性を含む地山性状を把握することである.本稿では，事前の地山情報取得に限界のある土かぶりの大きいトンネル施工時において，適切な計測によって得られる情報を十分に活用することの重要性を示す.