鉄道運賃雑考: ピグーの運賃論を参考として

摘要

鉄道運賃のあり方は古くて新しい問題である。世界各国において近代化の途中で貨客輸送のィンフラは経済発展にとって不可欠であり，早急な整備が要請された。そしてその根幹は鉄道であつた。鉄道は公的主体として出発しながらも民間の格好の投資対象となり発展を遂げた。日本では，明治期に大規模な国有化が実現するが,数十年の時を経て1987年日本国有鉄道の分割民営化によつてすベての鉄道が「民鉄」となった。大規模な固定投資を必要としサービス提供が属地的な鉄道の場合，規模の経済による地域独占性が問題となる。独占者の行動は社会経済に資源配分上の歪みをもたらし，消費者から生産者への所得再分配を伴う。結果として適切な運賃はどのようなものか，学術的な探求の対象となった。いわゆる「交通論」として出発した鉄道運賃のあり方は.分析的な手法を備えたミクロ経済学の誕生とともに活発に論じられるようになった。