高速カロリメトリーによる高分子の結晶化キネティクスの解析

摘要

高分子の結晶化挙動の解析は基礎研究に留まらず，成形加工の観点から産業上も極めて重要なテーマに位置付けられ，膨大な研究がなされてきた。これらの研究の多くにDSCが用いられており，DSCは高分子の熱分析に必須のッールといえる。しかしながら，汎用のDSCでは最大の昇降温速度がせいぜい数十°C min~(-1))であることが結晶化挙動の研究を行う上で障害になることも多い。一例として，DSCによる低速冷却では溶融状態から結晶化温度までの冷却途中に起こる結晶化を避けることができず，高過冷却液体からの結晶化挙動を調べることは困難な場合が多い。また，溶融状態からの冷却速度に応じた結晶化温度や結晶化度を把握することも限定的となる。これらの課題を解決するために，注目されている手法に高速カロリメトリー（FSC：Fast Scanning Calorimetry)がある（本稿では和名として高速カロリメトリーを使用）。~(1-9))FSCを用いることで最大で1,000,000 Ks~(-1))における昇温.冷却時の熱の出入りを調べることが可能となり，熱分析の適用範囲が広がった。筆者らはFSCを用いた高分子の融解キネテイクスの解析を行つており，そちらは別報の解説記事を参照されたい。~(10))本稿では，FSCを用いた非等温•等温での高分子の結晶化キネテイクスに関する研究成果を解説する。~(11-14)