人の知性を司る脳，その模倣としての機械学習

摘要

脳は古くより人の知性を司る基盤として研究され，その動作原理に関する知見が長きにわたつて蓄積されてきた.蓄積された脳の動作原理についての知見は，機械学習の研究に対して，そのアイデアの源泉として歴史的に強い影響を与えてきた[1].それとは逆の方向として，機械学習における知見が，神経科学研究で見出された事例もある.また，近年の神経科学では，機械学習の手法の活用により，脳活動から認知•行動などの情報を読み解くデコーディング技術が広く用いられている[2,3].とくにBrain-Machine Interface (BMI)[4]やニューロフィードパック技術[5,6]の発展により，デコ一ディング技術は認知内容や行動の解読だけでなく ，その介入まで実現しつつある.このように神経科学と機械学習の研究は，発展の過程で相互に影響を及ぼしあっており，両者の関係は近年ますます複雑な様相を呈するようになつている.