熱アシス卜プラズマ処理によるPTFEの革新的な表面改質 と異種材料との強力接着への応用

摘要

フッ素樹脂は，フッ素原子を含むため，撥水撥油性'耐薬品性•耐候性•耐熱性•難燃性•非粘着性•低摩擦性•電気絶縁性などに優れている。フッ素樹脂の生産量は樹脂の中で 1%以下であり，汎用樹脂と比較すると，フッ素樹脂は決してメジャーな材料とは言えない。ただし，フッ素樹脂でなくては耐えられない環境，フッ素樹脂でなくては達成できない性能があり，例えば，半導体産業，自動車産業，通信分野(電線被覆）などで幅広く利用されている。そして，経済産業省生産動態統計および財務省貿易統計によると，国内のフッ素樹脂の需要は増加しており，2017年で過去最高を記録している。ただし，フッ素樹脂は汎用樹脂に比べて非常に高価であるため，異種材料と複合化することでその使用量をなるベく低減することが求められる。マルチマテリアル化する上で最も重要な点は，異種材料界面における接着強度である。フッ素樹脂の接着性は極めて乏しいため，異種材料と複合化する際は表面改質が必須となる。これまでは，Naを含む劇薬を使用したウエットプロセス"-3)によってフッ素樹脂の表面改質が実施されてきたが，環境負荷が大きい，表面粗さが増加する，変色する等のデメリットがあり，ドライプロセスへの移行が期待されている。本稿ではドライプロセスの1つであるプラズマ処理によってフッ素樹脂の接着性を劇的に改善し, 異種材料との強力接着を可能にする「熱アシストプラズマ処理」について，開発の経緯からその応用に至るまで幅広く紹介する。