嗅覚とホルモン•免疫系

摘要

嗅覚は，多くの動物において，天敵の察知や食べ物の探索といった生存に必要な情報を得るために重要な感覚である.しかし，ヒトの場合，周囲の環境情報の多くを視覚や聴覚から得ており，生存に必須な情報を嗅覚から得ることはあまりないと考えられる.一方で,何かにおいを嗅いだ時に，心地よい気分になったり，懐かしい記憶が呼び戻されたり，逆に不快な感覚に襲われるなど，においによって感情が変化した経験のある方は多いのではないだろうか.また，ヒトは，アロマセラピーのような，意図的ににおいを嗅ぐ行為で，ストレスの軽減や健康維持に努めてきた.この様に古くからにおいを嗅ぐことで体調の変化が起きることを経験的に理解していたと思われる.さらに，洗剤や柔軟剤，シャンプー，香水というように，身近なところでも様々なにおいがあふれている.ヒトは，自身に香りを纏うことで，自らの好感度を高めようとするのであろう.